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前2回のコラムで、森川はデスクトップビデオに取り組んでいるという報告を書いた。その結果 市販ビデオパッケージとして『FIREWORKSビデオトレーニング・基礎編1』というタイトルで商品を作ることになった。VHS/67分で定価は2800円。久々の森川の一球入魂である。今回は全てWebで販売を行う。販売は、デジクリにもコラムで登場していただいた“京都のTシャツ屋”で有名なイージーの岸本さんに全面 依託をした。そう、一般の流通を通さない(通せない?)インディーズ展開である。

インディーズという言葉の響きは、僕らの世代には懐かしい言葉だ。実は森川は若かりし日々、インディーズに深く関わっていた。インディーズという言葉が登場する前は、自主制作という言葉で表現されていた。森川は大学時代からロック系のミニコミの編集やデザインを行っていた。もちろん自分達でもバンドをやっており、大学生活の後半は車に乗って日本中のライブハウスをサーキットする生活であった。

そんな中で、僕は大阪に編集部のある「ロックマガジン」という雑誌で、レイアウトのお手伝いをする機会に恵まれた。たかだか芸大生の趣味で作っているミニコミ経験しかなかったけど、そんな僕にも雑誌のレイアウトをさせてくれたロックマガジンには今でも感謝している。当時のロックマガジンには、付録としてソノシートがついていた。MDやCD世代のみなさんにソノシートを説明するのは難しいが(笑)要するにレコードをさらにペラペラにしたもので、僕らの世代では、小学館の学習雑誌によく付録でくっついていたものである。

ロックマガジンの編集長の阿木譲さんは、広く音楽を流通させる目的で、いくつもの刺激的なバンドをソノシート化して本誌の付録に付けていた。そのバンドの殆どは乱暴にプロ・アマの区別 で言うと、アマに近い存在なのだが、当時(1970年代後半)のパンクからニューウェーブの流れの中で重要なバンドが多かったのである。一般 の流通ではなく雑誌の付録と言う形態だが、それゆえに存在感もある…そんな流通 の方法に当時、大学生だった僕にはとても刺激的を受けた。
ちなみに僕がレイアウトで関わっていた時のソノシートのアーティストは、現在も現代美術作家として活躍中の藤本由起夫氏である(余談だが、この後僕が大学に戻ってからバンド活動を本格的に開始した時、当時芸大の助手をしていた藤本氏と偶然の再会をし、その後も親密な関係が続いた)

その後、再びインディーズに関わったのは僕がデザイナーとして仕事を開始して3年目のことだった。当時の僕は友人と大阪のアメリカ村でデザイン事務所をやっていた。まあデザイン事務所といっても、ミュージシャンとイラストレーターとデザイナーとサーファーとヒッピーの集まりのようなところで(笑)、週末にはマリファナの匂いがしていたりもするアブナイ仕事場だった。いわゆる若気の至りというやつである。

そこで、一緒に仕事をしているデザイナーが、関西のインディーズレーベルのジャケットデザインを行っていた。おそらく僕が大学の頃、ロックマガジンでレイアウトをしたりバンドをやっていたころがインディーズの黎明期だったと思う。その5年後くらいが、日本のインディーズの第一次全盛期ではなかっただろうか。そのインディーズレーベルは日本のパンクロックを語る上で非常に重要なレーベルであり、バンドであった。実は彼等の解釈するパンクロックとは、音楽はもちろんだが、「自分達でなんでもやってやる!」というアグレッシブな姿勢がパンクだったと今でも思う。そのバンドはラフィンノーズという。

僕達のオフィスには、ラフィンノーズの中でも、レーベル運営で非常にアクティブに動いていたPON氏がジャケットの打合せでよく来ていた。音楽やビジュアルでのパンクなイメージとは異なり、非常に腰が低く。自分達のレーベルに自信を持ち、絶対に成功してやる!というメッセージを彼の笑顔の中に感じたものである。本当に彼等はイキイキと輝いていた。

その2年後。僕はまたまた若気の至りで、株式会社なんぞを設立してしまった。こんな僕が代表取締役なのだから、当然好き勝手なことばかりして、あっさり2.5年で倒産してしまうのだが、その間も僕はインディーズな趣味を活かしてビジネスをしようと試みていた。それはミニコミ制作。当時関西で活躍するアーティスト(音楽と美術と演劇)を紹介するインタビューマガジンだ。その中でまだ当時は全国的なメジャーではなかったが、僕達の編集の視点で「これはスゴイ」と思う人たちにどんどんインタビューした。少年ナイフ・嘉門達夫・ハナタラシ・デッドエンド…当然というか、実力のある人たちはその後、さらにメジャーに進んでいったのである。

それと、同時にレコードレーベルもスタートさせた。ミュージシャンの高野寛君が在籍していたバンドも、僕のプロデュースでレコードをリリースした。随分前に彼のWebサイトを発見してメールを送ったら、「あの時は迷惑かけました」と逆に恐縮されてしまった。
そのミニコミもレコードレーベルも作っていくのはとても楽しい作業だ。自分達がデザインしたものが本になり、レコードになる。カタチのある商品になる。この瞬間はとても快感である。しかし、実際にはその出来上がった商品を実際に販売し、利益を上げていくことが最も重要であり、かつ苦しい作業なのである。重たい本やレコードを鞄に詰めて、まるで薬の行商のように一件一件、レコード店や喫茶店、ブティックや雑貨店を訪れて頭を下げた日々は、今思い出してもどっと疲れる。その後、本もレコードも楽譜扱いの取次店に依託する…という大人の手法も覚えたのだが、そうなると今度は入金まで気の遠くなるような時間がかかるのである。

結局このままだと、本業のデザイン業務にまで支障をきたし、経営的な圧迫によって危機的状況を引き起こしかねない…という僕の社長的判断で、森川の事業としてのインディーズ展開は2年程で挫折したのである。作りたいものを作ることよりも、作ったものを流通 させる方がインディーズにとっては重要なのだと、つくづく思い知った次第だ。

それから10年以上の月日が流れ、僕はWebサイトでG-TOOLというサービスを開始した。1万点のグラフィック素材をWebでフリーでダウンロードすることを許可する…というものだ。このデジクリのデスクである濱村さんにも数多くの素材を作っていただき、おかげさまでG-TOOLは日本の素材提供サイトとしてはナンバーワンのアクセス数になった。ちなみに現在も1日10万ページビューというカウントを続けている。

このG-TOOLでは、大阪のソフトウェア代理店であるフォーチュンヒルと組ませて頂き、ソフトウェアパッケージとして、4本の素材ソフトを作成した。この時も中のデータはもちろんパッケージとして箱として製品が完成した時の喜びは今でもはっきり覚えている。今までのインディーズとは異なり、こんどはちゃんとした会社で作成されたパッケージだ。当然コンピュータを扱うショップの店頭にも並んだ。今までインディーズで苦労していた事を思い出すと、つくづく流通 ってのはありがたい…と思った。それは2年後にオーム社から自分の著書が刊行され、書店の店頭にならんだ時も同じ感動を覚えたものである。

しかし、G-TOOLのパッケージ版を作り最も感動した「流通の仕組み」ってのは、よくよく考えると、どえらいコストがかかることもショックだった。制作者が時間と労力をかけて作成したソフトに対して、価格を設定する。しかしその1本のパッケージには、それを扱う代理店の経費、倉庫代、流通 (問屋)の経費、そして販売店の経費などが次々に引かれていくので、結局制作者にはあまり儲からない。

それならば…とG-TOOLをメインにフォーチュンヒルさんが設立したタワーズという会社では、その流通 の経費をすべてインターネットでぶっとばそう!とG-TOOLの素材を同じくCD-ROMで製品化し、オンラインで販売する試みを開始した。とにかくユーザーが望んでいるのはコンテンツなのだから、無駄 な箱などは全て廃止して、郵送のコストもぎりぎりまで下げた製品を作った。店頭流通 版と比較すると、さすがに本数は少なかったが、それでもオンラインだけで販売するG-TOOLは毎月確実に売上を伸ばしていた。

そのタワーズは、オンライン販売を開始して半年で閉鎖してしまい、僕の2度めのインディーズへの挑戦は終わった。しかし、半年間の経験はとても貴重なものだった。今から約2.5年前の出来事だった。当時はまだまだインターネットでショッピングをする…というマインドそのものが未成熟な時期だった。ネットでモノを購入することに対する不信感が日本中を席巻していた時代なのである。それでもモノが売れたという自信があるからこそ、森川は3度めのチャレンジを試みようと思っているのである。

僕にとってのモノ作りの喜びは、出来上がる寸前の瞬間。G-TOOLでパッケージの色構成が上がって、手作りで箱を組み立ててみる時。ミニコミの版下をコピーしてカンプを作っている時。ビデオを作成し、完パケを自宅のテレビでチェックしている時。まだ世間に流通 していないモノを自分だけが確認しているんだ…という実感というか快感があるからこそ、モノ作りは止められないのだと思う。

今回のビデオ作成は今までCD-ROM・書籍と関わってきて、また違った手応えを感じている。売れるかどうかは、まったく分からないけどね。けど誰一人映像のプロがいるわけでもないのに、び1時間以上の映像を作れてしまったことは、クリエイターとしての僕に新しいワクワクを与えてくれた。今後も色々と企画を考えているので、また報告します。

※この原稿は日刊・デジタルクリエイターズに掲載したものです。

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